武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

2006-01-01から1年間の記事一覧

 『希望格差社会』山口昌弘著(発行筑摩書房)

以前に同じ著者の「パラサイト・シングルの時代」を読み、時代の流れを敏感に読み解く著者の家族社会学者としての手腕に感心したことがある。本書は、家族という切り口から現代社会を論じてきた著者の現代社会論のひとつの総括的仕事という印象を受けた。 1…

 労働市場の歪み=プールの児童水死事故にかかわって

昨日、埼玉県ふじみ野市の市営プールで、流れるプールの吸水口に小学2年生が吸い込まれ、死亡するという痛ましい事故が発生した。吸水口の蓋が何らかの原因で外れ、そこに当該児童が吸い込まれてしまったもの。 今日になって、事故発生の原因を報道各社は、…

 この国の労働市場の歪み(あるニュースに触発されて)

この国が次第に格差社会化していることについては、何度も書いてきたが、何度書いても気持ちが晴れることはなく、益々暗くなるばかり。毎日新聞のサイトで見つけた小さな記事が気になったので、まず、そっくり引用しよう。 相対的貧困と幸福感 【PJニュー…

 『江戸紫絵巻源氏』 井上ひさし著・山下勇三絵(発行話の特集)(画像は本書の表紙+背表紙)

1990年頃を頂点とするこの国のバブル経済期は、経済史的にはとんでもない狂乱物価で庶民が苦しんだ時代だったかもしれないが、文化創造の面から振り返ると、大人にとっては類稀な面白い時代だったともいえないことはない。庶民の頭とお財布がまれにみる…

 17年度の主な年齢の平均余命(7月25日発表)(画像は先月スイスのハイキング道で見かけたアザミのような花、花弁に小さな虫が来ていた)

厚生労働省が今年度の平均余命を発表した。この国の平均寿命は、相変わらず世界のトップクラスを維持しているようだ。国際比較を見てみると、80歳を越えている国が多数あり先進国と言われている国では大した違いはないことが分かる。だが、南アフリカのよ…

 『アナザー・ワールド』 ちあきなおみ 発売OMCA

1992年に歌手活動を停止してしまい、よほどの機会がなければテレビなどでは目にすることのなくなった歌唱力では群をぬく存在であった「ちあきなおみ」。そのアナザー・ワールドというCDを聴いて驚いた。 以前に、ポルトガルに旅行した折、リスボンの夜だ…

 黄金郷 上野ちづこ著(発行深夜叢書)

上野千鶴子の著作を読むようになって何年になるだろう。最初に手にしたのはたぶん「セクシイ・ギャルの大研究」あたりだったのではないか。背後に感じられるしっかりと勉強している者がもつ自信と切れ味のいい言葉の使いまわしが楽しくて、長年愛読者をつと…

 パロマ瞬間湯沸器の<連続殺人事件>について思うこと(画像は霧降高原で見かけたクルマユリ、凛として高原の冷気の中で咲き誇っていた)

パロマ工業のガス瞬間湯沸器による20件にものぼる死亡事故が連日報道されている。一酸化炭素は無味無臭、自分が中毒しかかっているとの認識が被害者にまったくないまま意識不明に陥り死に至る。何とも痛ましく関連の記事を読むたびに胸が苦しくなってしま…

 自家用車の選択あるいは中古車という結論

定年退職して車の使い方が変ったので、今乗っている車を買い換えようということになった。既に7年ほど乗っているので愛着が深いが、元々走行距離の少ない中古車だった。ミッションがCVTのモデルだったので購入したが、途中でCVTそのものが壊れたほかは大きな…

 『カーラのゲーム』 ゴードン・スティーヴンズ著 藤倉秀彦訳(東京創元社)

急激な猛暑にあてられて、なかなか1冊の本を読み続けられない。少しでも物語の推進力が弱くなると、気持ちが飽きてしまい、つい別のお話に手が伸びてしまう。こらえ性がなくなり、長いお話を延々と読み続けるのが辛くなってきた。困ったことだ。何度か中断…

 奥日光と霧降高原

(画像は霧降高原のニッコウキスゲ、鹿の被害から回復したのか、ニッコウキスゲの群落が見事に花を付けていた) 急激に気温が上昇してきたので、 避暑をかねて奥日光へ一泊二日のドライブに行った。 はじめに奥日光の戦場ヶ原を散策してみたが、 ホツケシモ…

 スイス旅行⑨

この日は6:15に宿を出発、バスでジュネーブ空港へ、ジュネーブ発9:25のKLMでアムステルダム空港へ行き、アムステルダムを15:20に出るKLMで帰国、日付は7月4日の9:40に成田着。厚い梅雨雲の下にたどり着いた感じがした。 明日は早朝…

 スイス旅行⑧(画像はハイキングコースを両側から挟むようにして咲いていたアルペンローゼの群落。分厚い絨緞が斜面を覆いつくして見事というほかない。)

この日は8:30に宿を出発、現地ガイドの案内でテレキャビンとロープウェイを乗り継ぎ、2525mのプレバン展望台へ行き、モンブラン山群の見ながら、ハイキング、所々残っている雪渓に足を取られながら約4時間ののんびりハイキング。降りのハイキング…

 スイス旅行⑦(画像はエギュイードミディ展望台、ロープウェイで3842mのここまで行ける。360度の視界はモンブランを含むスイス国境のアルプスの山々を一望。)

午前8:30に宿を出発、3時間半ほどのバス移動でフランスのシャモニーへ。昼食後、ロープウェイを乗り継ぎ標高3842mの展望台へ空中散歩、目の眩むような高いところを移動していくので高所恐怖症の方にはお薦めできない高山観光、ジュアン氷河の上を…

 スイス旅行⑥(画像は完璧なまでに晴れ渡った快晴のマッターホルン、蒼穹に突き刺さった楔のような単独峰の雄姿、どこから見てもこの日一日中この姿が見えていた)

この日は、8:30に宿を出発、現地ガイドの案内でツェルマットからシュヴァルツゼーへ60人乗りの大型ケーブルカーで昇り、5時間の1日ハイキング。ここ数日、雨を降らせる前線がイギリス辺りに停滞、ヨーロッパ全域が高気圧に覆われ、スイス全体が晴天…

 スイス旅行⑤(画像はこの日のハイキングの折に足元に咲いていたリンドウ科の花、詳しい名前は図鑑で探しても類似の花が多くよく分からない、とにかくいたるところに咲いていた。)

午前8:30にツエルマットの宿を出発、登山列車で3130mのゴルナーグラート展望台へ行き、360度の素晴らしい展望を楽しんだ後、高原ハイキング、広大な視界にいつも天に突き刺さるようなマッターホルンが聳えていて、気分爽快。 リュッフェルベルク…

 スイス旅行④(画像はグリムゼル峠から歩いて観光できるローヌ氷河の中のトンネル、氷河の見事な青色が天井から降りそそぐ)

この日はウェンゲンの宿から約3時間のバス移動、途中グリムゼル峠2165mとフルカ峠2431mというスイスの有名な峠道を越える。日本も山国なので峠道が多いがこの時通った峠のような険しい峠は余り見たことがない。バイクが何台も楽しそうにバスを追…

 スイス旅行③(画像は整備されたハイキングコースの正面に聳えるアイガーの北壁、この絶壁の中を登山鉄道が登って行き、窓から外が覗ける。)

午前9時に宿をでてロープウェイを使ってメンリッヒェンへ昇り約2時間のハイキング。山岳地帯の初夏らしく一斉に高山植物が花開いていて一面のお花畑、その向うにアイガーのを含む4000m級のスイスアルプスが立ちはだかり、どこを向いても絵葉書の世界…

 スイス旅行②(画像はベルン市内の随所に立っている噴水の装飾の一つで子供をとらえて食べる怪物像、修学旅行の子供たちが怖そうに見上げてなかなかの人気)

現地の一日目は、チューリッヒから約1時間バスで移動してルツェルンへ、市内で瀕死のライオン像と欧州最古の屋根付き橋、カペル橋を観光。さらに約2時間バスで移動してベルンへ行き、世界遺産になっている旧市街を観光。その後、約1時間半をかけてラウタ…

 スイス旅行①(画像は旅行中の早朝に見たマッターホルンの夜明け)

今日からスイス旅行、成田発11:30のKLMのKL−862便でアムステルダムへ、そこで乗り継ぎ、スイスのチューリッヒへ、アムステルダムで4時間25分の待機時間があり、約17時間の移動時間。現地時間で22:10分到着、宿に着いたのは22時半ご…

 『冠婚葬祭のひみつ』斎藤美奈子著(岩波新書)

斎藤美奈子さんの本とは、「妊娠小説」からの長年の読者、斬新な角度からの明快な評論が気に入って、新刊が出るたびに読んできた。複雑に意味が混ざり合うようなごてごてした概念砕きが上手で、彼女独特のの実も蓋もなくなるような評論のファンの1人。 本書…

 退職者の梅雨模様

梅雨前線が停滞して ぐずついた天気が続いている 散歩に出ても傘が手放せない。 今日も歩き出してしばらくすると 細かい粒がふわふわと落ちてきた 傘をさすタイミングが難しい 粒が大きくなり落ちる勢いが強くなって 傘を広げたがじきに雨粒に元気がなくなっ…

 『龍時01−02』 野沢尚著 発行文芸春秋

サッカーのワールドカップ・ドイツ大会が始まり、マスメディアの関心がサッカーに集中、手を変え品を変えして、サッカー関連の報道に明け暮れている。この国のチームは、先日、後味の悪い負け方で初戦に敗退した。どのように勝つか負けるか、そして、勝って…

 映画・ダヴィンチ・コードの印象記

先日、ダヴィンチ・コードの映画を見に行った。開始時間の10分ほど前に映画館についたら、30人ほどの行列が出来ていたのに、吃驚。評判になっているような映画を余り見たことがないので、本当に吃驚した。 見た印象は、1000万部売れたという原作を何…

 フリーター&ニート問題の本当の深刻さ(近所の雑木林に姿を見せるようになってきたミノムシ、盛んに葉っぱを食べてすこぶる元気)

11日の朝日新聞の社説「フリーター 「氷河期」の若者を救え」を読んでいて、同感したフレーズを見かけたので、その部分をまず引用する。景気回復が言われている陰で、取り残されようとしている就職氷河期時代に就職に失敗した若者達の高齢化を憂えた文章に…

 現代詩に目を開かされた「氷った焔」の詩人、清岡卓行さん死去

新聞の社会面をひらくとすうっと視界に浮かび上がってくる見出しがあるのが不思議だ。殺伐とした世相を反映して大きな見出しが躍っていても、お悔やみの記事がなぜか目に飛び込んできた。詩人で小説家の清岡卓行さんが83歳で6月3日に亡くなったとの記事…

 その① 『何もしないということ』

(画像は散歩の途中で見つけた可愛い花) 退職した後、 何をするかという話題がある。 仕事は、しないことにしている。 働かないと食べてゆけない労働者の身分だったので、 40年近くしかたなく働いてきたが、 仕事人間にはなれなかったので、 働くのはもう…

 『ベストセラー小説の書き方』ディーン・R・クーンツ著 大出健訳 朝日文庫

一言で言えば、これは表紙裏の宣伝コピーにもあるように、エンターテーメントとなるように計算されて書かれた娯楽読み物としてのハウツー物、題の通りのベストセラー小説の書き方。しかも、ベストセラーの目標設定が半端ではない。なんと100万部を越える…

 教育基本法改正を巡る<愛国心>関連の動き

いつものことだが、教育内容を巡る動きで一番気をつけなければならないのが、通知表関連のいわゆる評価の問題。いつの間にかこの国は、民間でも役所でも、業績や成果をいかに評価するかが、ことの動向を大きく左右するようになってしまった。成績の優劣、勝…

 教員免許更新性導入の背景と問題点

26日の朝日新聞によれば、中教審のワーキンググループは現職教員の教員免許にも更新性を導入する方向で案をまとめたとのこと。 100万人を越える現職教員の人事管理の最大の標的は、「指導力不足教員等に対する人事管理システムの構築」であることを知ら…