武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

音楽

 ブリリアント・クラシックスのモーツアルト全集の事典的活用のために

音楽CDの売り上げが伸び悩み傾向にあるという。代わって、ネットを利用する音楽配信事業が好調らしい。ipodなどの場合、いちいちCDから入力するよりも、ネットからまとめてダウンロードしたほうが作業も手間もかからず効率的、CDのように場所もとらず便利で…

「ジョン・コルトレーン『至上の愛』の真実」アシュリー・カーン著 河島文丸訳(発行音楽の友社)

この7月で、ジョン・コルトレーンが亡くなってからちょうど40年になる。60年代に青春時代を過ごしたものにとって、ビートルズと同じように、モダンジャズもまた、生きている証のような意味合いを持つ音楽だった。演奏はもとより活字の中に6文字のカタ…

 『おんがくぐーん』音楽の学校4・音楽の劇場4(発行ほるぷ出版)

A面に入っているのは、音響効果を巧みに利用した物語、音を食べる怪獣が町中の音を食べて街の音がなくなってしまうが、消化の悪い音を食べたせいか、あるいは食べた音の組み合わせが良くなかったのか、それとも単なる食べ過ぎのためか、怪獣が腹痛を起こし…

 『おんがくぐーん』音楽の学校3・音楽の劇場3(発行ほるぷ出版)

A面に入っているのは、音楽の学校とは言うものの、浪速屋辰造さんの浪曲「ねずみとねずみ小僧」。 江戸の正月を舞台に、町中から一斉に消えてなくなった鏡餅の謎をめぐって、ねずみ小僧次郎吉が不思議なねずみの親子の物語に巻き込まれ、怪しい笛の音色に魅…

 『おんがくぐーん』音楽の学校2・音楽の劇場2(発行ほるぷ出版)

A面、表面の音楽の学校2には、別役実さんの「空のおとし穴」というシュールな感じがする幻想的な物語が収録されている。 四人の盲(めくら)が登場人物、中村伸郎さんのナレーションで物語が進行する。音を頼りにしている四人を使いでいる綱が切れてしまい…

 『おんがくぐーん おんがくのほん』音楽の学校1・音楽の劇場1(発行ほるぷ出版)

LPレコードの歴史を調べてみると、1951年3月に「日本コロムビアが日本初のLPを輸入発売、長時間レコードと呼ばれた。」とある。そして、1986年に「CDがLPの国内生産枚数を追越」した。 一般に普及したのは50年代の半ばから80年代の半ば…

《ベートーヴェン主要作品ボックス(60CD+CD-ROM)》発売元SONY BMG

高校生の頃から聞き出したベートーベンの音楽、かれこれ40年以上も、ベートーベンを聴かなかった年はおそらくないはず。強烈な音の主張も悪くはないが、清楚で透き通るような叙情性、これほど儚くて美しい音があっていいものか、と思うほどに美しい音を創…

 『アナザー・ワールド』 ちあきなおみ 発売OMCA

1992年に歌手活動を停止してしまい、よほどの機会がなければテレビなどでは目にすることのなくなった歌唱力では群をぬく存在であった「ちあきなおみ」。そのアナザー・ワールドというCDを聴いて驚いた。 以前に、ポルトガルに旅行した折、リスボンの夜だ…

 『アランフェス協奏曲』村治佳織(ギター)新日本フィルハーモニー交響楽団

かなり以前に出たCDだが、スペインへの旅行を計画しているので、久しぶりに聴いて感心した。これまでこのアランフェス協奏曲は、男性の著名ギタリストの演奏で何種類も聞いてきたが、この村治佳織さんのCDが一番私にはしみじみと3楽章総てに浸ることができ…

 『ゲルギエフ指揮・マリンスキー歌劇場管弦楽団・ワーグナー指輪演奏会』印象記

本当なら1月11日から東京文化会館で始まる「ゲルギエフ&マリンスキー・オペラ2006《ニーベルングの指環》」の4日間のリングチクルスに行きたかったが諸般の事情により断念、所沢ミューズ・アークホールのハイライト演奏会に行ってきた。前回、モー…

 『マイルスを聞け!』中山康樹著(双葉社文庫)

年の初めの推薦図書1号を何にするか迷ったが、これに決めた。モダンジャズの帝王とまで言われたジャズトランペッター、マイルス・デイヴィスの全アルバムの解説本。ページ数が800ページを越える分厚い1冊、1枚1枚のアルバムにつけた、情熱的で詳細な…

 『西洋音楽史−「クラシック」の黄昏』岡田曉生著(中公新書)

歴史の本を読む喜びは、これまで自分の中にあった歴史認識を新たな事実や方法で書き換えることにあるような気がする。勿論、薄れ掛けていた知識を窓ガラスを磨いて視界を鮮明にするように、新鮮に甦らせるもらうのも、歴史書を紐解く喜びといえる。歴史教科…

 マキシムのソロリサイタル印象記

マキシムは1975年クロアチア生まれのピアニスト、と言うことは1991年の旧ユーゴスラビアからの独立と90年代前半のセルビア人との戦争など、国家と民族が激動する紛争の日々を、多感な20代に過ごしたことになる。プログラムの解説によれば、戦火…

 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のコンサート印象記

チェコフィルの全曲ドヴォルザーク公演があると言うので、所沢文化センター・ミューズ・アークホールへ聴きに行ってきた。プログラムは、①序曲「謝肉祭」、②交響曲第8番ト長調、③交響曲第9番ホ短調「新世界より」。指揮はズデネク・マカール。 文句なしに…

 モーツアルト・レクイエムのコンサート印象記

今日、11月20日、所沢市民センター ミューズ アークホールにおいて、モーツアルトのレクイエムをメインプログラムにすえたコンサートがあり、聴きに行ってきた。東京交響楽団、指揮はユベール・スダーン、ソプラノは高橋薫子、アルトは小山由美、テノールは…

 ルービンシュタインのベートーベン・ピアノ協奏曲第五番<皇帝>の演奏に触発されて

何よりも奏者88歳時のピアノ演奏がきわめて素晴しい。RCAから出ているCDを何度聴きなおしたか数え切れない。威風堂々がっしりと聳え立つような絢爛たる音の構築物、文句のつけようがない感動的な名演奏。 このCDのことを敬愛する音楽評論家、宇野功芳さんは…

 今日、所沢市民文化センター・ミューズにて小林研一郎指揮の日本フィル演奏会があり、小研(コバケン)さんの盛大に盛り上がる指揮を期待して聴きにいってきた。プログラムはチャイコフスキー、小山実稚恵さんのピアノによるピアノ協奏曲第1番と交響曲第4番。

まず、前半の小山実稚恵さんのピアノが良かった。昨年、スクリャービンのピアノソナタ全集をリリース、話題になった実力派ピアニスト、期待通りメリハリのある立派な演奏、この曲は高らかに鳴り響くオーケストラと体重を鍵盤に叩きつけるような分厚いピアノ…

 『キラーストリート』サザンオールスターズ(ビクター)

久しぶりにサザンの新しいアルバムが出た。さっそく買って聴いてみた。いつもサザンしっとりとした叙情的ロックを楽しく聴いてきたが、今回もたっぷり満足した。 日本語をリズムとメロディーを基調に使うので、あっと驚く新鮮なサウンドと言葉の出会いが楽し…

本棚の奥から懐かしい本が出てきた。ネットでざっと検索してみたが、入手するのが難しそうなので簡単に紹介してみたい。

表題の通りこの本は、音楽の記録メディアがレコード全盛だった頃のジャズ名盤案内書。この国のジャズファンは、この頃はほとんどレコード鑑賞を通してその魅力に触れ、ファンに留まったり、マニアに成長したりして、ジャズという音楽の深みに嵌っていったも…

 1969年ウイーン生まれの躍進著しい若手ヴァイオリニスト、ベンヤミン・シュミットのリサイタルに行ってきた。会場は所沢市民文化センターミューズのマーキーホール、プログラムはモーツアルトからイザイまで、マリアーネ・ヘーリングさんのピアノとのデュオが3曲とソロが1曲、どの演奏も力強く、メリハリ気が利いていてよく響きわたる素晴らしい演奏だった。弱音でたっぷりメロディーを歌わせるところでは歌心があふれだし息を呑むような美音を奏でてくれた。

モーツアルトでは愉悦に満ちた愛らしい舞い踊るような楽しさ、ピアノとの躍動感あるやり取りがとても楽しかった。2番目のバッハ無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調では、技巧の冴えを響かせながら難曲のシャコンヌを盛大に盛り上げ会場を…

 ヘンリク・ミコワイ・グレツキ作曲、告発の歌ではないが重い意味が込められた現代の交響曲。全編、嘆きと悲しみに浮いたり沈んだりして、たゆたう悲歌のシンフォニーとしか言いようのない、つらい音楽である。作者グレツキは1933年ポーランドのオシェウェンツィム生まれ、このポーランド語の地名を読み替えるとアウシュヴィッツ、ナチの強制収容所があったところ。資料を見ると、アウシュヴィッツの強制収容所建設が開始されたのが1940年、ということは、グレツキ少年7歳の時。

グレツキの評伝は知らないが、この事実が彼の人生に与えた影響は、小さくなかったのではないか。「悲歌のシンフォニー」と呼ばれるこの曲を聴いて、一番気になったのは、まずそのこと。音楽を聴いて、作曲者の伝記的なストーリーを気にする聞き方はどうかと…

おびただしく生産されている音楽との、新しい出会い方の一つとしてお勧め 偏食傾向のある音楽好きのお気に入りサイトになれるといいが?(画像は、ベランダのアサガオの蔓にやってきたアブラゼミ、しばらく風に吹かれてこうしてつかまっていた)

いつごろ始まったのか知らないが、面白い音楽サイトに気づいたので、思いついたことを書いてみる。それは、yahooのサイト中にあるサウンド・ステーションというサイト。無料でジャンル別にいろいろな音楽を配信している。常時、10ジャンル以上の分野別の音…

  デビュー10年、着実にレパートリーの幅を広げ表現の奥行きを増し、多彩な楽曲をギターの音色にのせて軽やかに好演 アコースティックギター表現の上限に到達か

台風7号の関東上陸のその時間、村治佳織さんのギターリサイタルを聴きに行った。次第に風雨が強まっていたが、中ホールの中には全く外の音は伝わってこない。プログラムの紙を持ちかえる音さえ雑音に聞こえてしまうほどの静かな空間、その空間に村治佳織の…

 この日のプログラムは、前半が新鋭フルート奏者高木綾子さんがソロをとるモーツアルトのフルート協奏曲第1番ト長調K.313、後半は若杉弘指揮の東京交響楽団によるマーラーの交響曲第5番嬰ハ短調。(これは昨日の7/23に公演されたもの)(画像はネット上で見つけた若杉さんだが、かなり以前のお姿のよう。現在はもう少しお年をめして、渋く枯れた感じがただよい、それだけに飛び上がらんばかりのダイナミックな指揮ぶりに一層こちらを熱くさせるものがあった)

この日の午前中には若杉弘さんのリハーサルの様子が一部の会員に公開されるという特典があった。残念ながら参加できなかったが、粋な企画と感心させられた。さらに、開演の30分ほど前には、会場のホールで入場者には、弦楽四重奏のミニコンサートのサービス…

 グザヴィエ・デ・メストレ・ハープリサイタル印象記 

レコードやCDでは何度も耳にしているが、実は、ハープだけの生演奏は初めて。オーケストラの一角を占めている演奏は何度か聴いたことはあるがソロ・コンサートは聴いたことがなかったので、それだけで楽しみにして聴きにいった。しかも、泣く子も黙るウィン…

 モーツアルト「魔笛」「モスクワ室内歌劇場管弦楽団」公演

2年ほど前、「モスクワ室内歌劇場管弦楽団」の公演でモーツアルトの「ドン・ジョバンニ」を鑑賞、驚くほど斬新な演出と高い音楽性の魅せられたので、今回、同じ歌劇場管弦楽団の「魔笛」公演を見てきた。 まず、今日の公演の感想を、演出全体は、魔笛には奇…

 イリーナ・メジューエワ・ピアノリサイタル印象記

ロシアからとてもかわいいピアニストが来るというので早速出かけて行って聴いてきた。いや、見てきたといったほうがいいか(笑)。開演とともにホールの照明が落ち、ステージ中央のピアノの周りだけに5個の天井のライトが当たり、その光の中にすらりとした…

 藤原真理 風の3部作

3枚組みのボックスセットを十年ほど前に思いきって購入、以来ずっとこよなく飽きずに聞き続けてきたお気に入りCD。1と2は久石譲プロデュース編曲、3は三宅一徳編曲。 藤原真理のチェロは元々叙情性あふれた切れのあるやわらかい音色をもち、小曲をしみじ…

 (写真は通り道の民家の庭先で咲いていた花、道に溢れ出すように美しく咲いていたのでついシャッターを押してしまった)

早朝出勤の日曜日とあっていつもの道には中学生も散歩の犬連れ散歩者もいない。わが道を行くという感じで20度以下の涼しい朝の散歩を楽しみつつご出勤。ipodでリヒテル演奏のバッハ・平均律クラヴィーア曲集を聴きながら。 この演奏にはちと文句がある。録…

 「君が代」伴奏拒否の波紋 心凍る教育現場からのレポート

「音楽は心で奏でたい」福岡陽子(岩波ブックレット) 一読、著者が追い込まれた苦境の理不尽さに背筋が寒くなった。文中に「心凍らせて」というフレーズが出てくる。歌手、高山巌のヒット作だが、最近の教育現場が心を凍らせるような状況にあることが手に取…